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2023年
1月「地球星人」村田 沙耶香 ☆
こういう作品が好きな人もいるのでしょう。それはいいですが、自分にはあいませんでした。主題は分からなくもないですが、世の中にも読者にも挑戦的な作品と思います。作者や作品についてもう少し予備知識があれば。「ねじれた家」アガサ・クリスティー ★★★★☆
ポアロもマープルもいません。というか探偵がいません。犯人は誰か以外の謎もトリックもありません。しかし読ませます。もっと評価されるべき(もしかして評価されていて自分が知らなかっただけ?)佳作。「半身」サラ・ウォーターズ ★★★★★
舞台は1870年代英国。主要登場人物はほとんど女性。主な場面は三つの建物の中。いずれも閉鎖的。中でも刑務所の描写はリアリティが高く、引き込まれます。陰鬱で耽美的。面白いです。ただ帯に書かれているのと違って、自分にとっては「ミステリ-」ではないです(ミステリ-の定義の仕方に帰着するだけですが)。「世界推理短編傑作集3」江戸川乱歩・編 ★★★☆
ヘミングウェイの作品が収められているのは意外でした。
『偶然の審判』の長編版『毒入りチョコレート事件』を読んでみたくなりました。2月
「荊の城」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★★☆
前作『半身』と同じく若い女の子が監禁、軟禁されます。前作に輪をかけて暗く、痛々しく、官能的です。が、楽しめる線としてはギリギリです。表現力は相変わらず高く、目、顔、指、心臓、血液等々様々な描写で人物の感情を伝えます(そこには落とし穴もあるのですが)。筋立てはかなりトリッキーで、正直無理を感じるところもありますが、作者の筆の力でまとめ上げています。「毒入りチョコレート事件」アントニイ・バークリー ★★★★
先月読んだ短編『偶然の審判』の長編版。ミステリマニアなら色々と語りたくなるであろう作品と思います。ですが、(マニアではないので)その辺りは触れません。面白いことは請け合いますが、作者の思惑・思想が強く滲み出ているのを是とするか否とするか。「新世界より」(上)(中)(下)貴志祐介 ★★★★
かなりのボリュームですが、ほとんど一気読みで、エンターテイメントとしては大いに楽しめました。文章は軽快で、雰囲気は青春冒険小説のようです。しかし読後の満足感には欠けました。序盤で想起した『地球の長い午後』風の、こういう条件下では生物、社会はこうなるのではないかという説明、考察が、様々な生物につき随所で、ヒトについては物語全体で行われ、そこにストーリーをからめていくのですが、難しかったのでしょう。もし本作が現代の価値観への挑戦、相対化を一つのテーマとしているのならば、自分にはあまり響かなかったです。本書のターゲットとなるような読者層から自分はとうに外れているのでしょう。辛口になりましたが、面白かったです。3月
「人類の起源」篠田謙一 ★★
「キャリー」スティーヴン・キング ★★★★☆
昔映画は見ましたが、小説は未読だったところ、BOOKOFFで見かけて。
作品とは関係ないですが、最後の解説がやたら長いです。「緑衣の女」アーナルデュル・インドリダソン ★★★☆
同じ作者の『湿地』を読もうかと思っていたところ、BOOKOFFで見かけたので。
なかなかの良作で様々な賞をとったのも宜なるかな。しかし、自分が読みたい話ではなかったです。4月
「忘られぬ死」アガサ・クリスティー ★★★
名探偵の登場しない所謂ノンシリーズものですが、ポアロものの短編『黄色いアイリス』とそっくりな話です。意外性のある犯人、巧みな人物描写で良作とは思いますが、トリックに説得力がありません。「黄昏の彼女たち」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★☆
サラ・ウォーターズの作品を読むのは『半身』『荊の城』に次いで三作目ですが、前の作品の魅力となっていた独特の陰鬱さがないのは残念でした。あと、やはりというかの共通点があり、『荊の城』で楽しめるギリギリと感じたそれが出すぎて、若干引いてしまいました。心理描写は流石です。5月
【傘鉾『マリオ』作成】
「君のクイズ」小川哲 ★★★★☆
知られざる早押しクイズの世界。求められるのは単なる知識ではない。
面白かったです。「遮断地区」ミネット・ウォルターズ ★★★★☆
いくつかの点でよく分かりませんでしたが、緊迫感はありました。6月
「鋼鉄紅女」シーラン・ジェイ・ジャオ ☆
二人以上の操縦者が巨大ロボットを動かすというのは、一つの系譜になっているのてしょうか。見たようなロボットの造形、三段階に変形進化するロボット。うーん、安易な気もしますが、大事なのは中身ですね、うん。期待して読みましょう。
序盤から中盤までは面白く読めました。特に戦闘シーンの描写はなかなか。
が、女性主人公と二人の男性の三角関係が出てきたあたりから、次第に自分の気持ちは離れていきます。なんとも主人公に都合のよい三角関係です。
また、男性が築いた独善的社会への反抗が繰り返し唱えられるのですが、あまりにも頻繁で表層的なので次第に鼻白んできます。男性に対する概念は、女性ではなく、死んだ姉に象徴される若い女子です(ただし、その時々で使い分けられているような)。若い女子は観念的な存在で、無垢な犠牲者として位置づけられます。物語の設定上強く虐げられた立場にあるのですが、そこに現実の男尊女卑の習慣や倫理を融合させ、男性の悪を強く主張します(なかなか巧妙です)。このロジックは主人公の場当たり的な言動を正当化するために使われるのですが、そんな理屈では受容できないほど、主人公と物語は破綻していきます。そして、とってつけたようなラストで物語は空中分解します。「ブラウン神父の醜聞」G・K・チェスタトン ★★★☆
「死人の鏡」アガサ・クリスティー ★★★☆
中編集。『厩舎街の殺人』『謎の盗難事件』『死人の鏡』『砂に書かれた三角形』の四作。旧訳版のせいもあるのか、表題作の「死人の鏡」は分かりにくかったです。引用されているテニスンの詩”鏡は左右にひび割れた”はマープルものの『鏡は横にひび割れて』にも使われてるものですね。