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==星の数は自分に合ったかどうかにより、作品の一般的評価からは外れています==
2023年
1月「亜愛一郎の狼狽」泡坂妻夫 ★★★☆
バラエティに富んだ短編作品集。呻るようなトリックがあるわけではないですが、癒やされるというか、読んで楽しいミステリーです。「マギンティ夫人は死んだ」アガサ・クリスティー ★★★★
ゆったりした序盤から加速していきます。「三つの棺」ジョン・ディクスン・カー ★★★☆
書内の『密室講義』で、トリックに対する”ありえない”との批判を批判しているのですが、現実的かどうかはともかく、物語を成立させる説得力があるかはやはり大事だと思います(単にトリックの善し悪しだけでなく、筆の力にもよります)。で本書ですが、いくつか欠点はあると思います。しかし確かによい所もあるのです。「受験生は謎解きに向かない」ホリー・ジャクソン ★★★★
『自由研究には向かない殺人』の前日譚。160頁と短めですが、工夫が凝らされてます。主人公の魅力は『自由研究-』には及ばないですが、らしさは感じられます。「でぃすぺる」今村昌弘 ★★★☆
2月
「無実はさいなむ」アガサ・クリスティー ★★★★★
ポアロもマープルも出ない、いわゆるノンシリーズもの。円熟味があります。「白亜紀往事」劉慈欣 ★★★★
『老神介護』に収められた短編のロングバージョン。壮大なおとぎ話です。
『鋼鉄紅女』に失望して以来、読んだSFは劉慈欣だけですね。読みたいSFに出会わないです。「湖底のまつり」泡坂妻夫 ★★★★☆
作者の他の作品とは一線を画す異色作。話は予想外の方向へ進みますが、最後にはちゃんと収束します。「人形館の殺人」綾辻行人 ★★☆
「死の猟犬」アガサ・クリスティー ★★★★
毛色の変わった短編集。面白かったです(解説は除く)。3月
「悪の教典」(上)(下)貴志祐介 ★★★★★
すがすがしいまでの主人公の悪人ぶりです。しかし舞台となる学校の先生もかなりひどいです。最後の一文には驚かされました。「世界推理短編傑作集5」江戸川乱歩・編 ★★★★★
全5巻の最終巻です。粒ぞろいの作品群。「午前零時のサンドリヨン」相沢沙呼 ★★★★
ニュートリノですか。ところで須川君のファーストネームは何だったのだろう。「チムニーズ館の秘密」アガサ・クリスティー ★★☆
登場人物が多い上に、変わった名前で頭に入りませんでした(年のせいかも知れないですが)。人物の個性や魅力も今一。「七つの時計」の姉妹編だとか。しかし「七つの時計」すっかり忘れています。また読んでみようかな。「七つの時計」アガサ・クリスティー 【評価済み】
「マリアビートル」伊坂幸太郎 ★★★★★
伊坂氏の作品はかなり前に『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んで以来です。『アヒル-』の巧みさには舌を巻いたのですが、自分には合わないように感じて、遠ざかっていました。本書も前半は”ちとどうかな”と思ったのですが、次第に面白くなり、加速するように読み終えました。4月
「チャイナ橙の謎」エラリー・クイーン ★★☆
うーん、いろいろと今一です。「エアーズ家の没落」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★☆
原題は”The Little Stranger”。この本は(原題も含め)、一貫した解釈を拒否しています。個々の出来事の解釈はあり得るにしろ、全体を通してあるものはただの雰囲気だけと思います。巻末の解説もとまどい気味のような。が、サラ・ウォーターズの世界は楽しめます。「象は忘れない」アガサ・クリスティー ★★★☆
最後に執筆されたポアロものだそうです。プロットは今ひとつのように感じましたが、円熟の描写がそれを補ってます。「グラスホッパー」伊坂幸太郎 ★★★★
『マリアビートル』の姉妹編。こちらの方が書かれたのも物語の順序も先になります。お話しとしては、それぞれ独立しています。「茶色の服の男」アガサ・クリスティー ★★★★
あまり期待していなかったノンシリーズもの。なかなか面白いじゃないですか。かの有名作品に通じるものがあるなと思ったら、解説でもそのように言われていて、そういう位置づけになるようです。ジュニア版もあるそうですが、このまま中学生でも楽しめそうです。5月
「隠し剣孤影抄」藤沢周平 ★★★★★
映画になった『隠し剣鬼ノ爪』を含む短編8作。ほとんど40~50頁程度の中に、背景・経緯、達人の立ち会い、秘剣そして欲と愛憎がうまく盛り込まれています。『女人剣さざ波』がよかったです。「コブラ」(上)(下)フレデリック・フォーサイス ★★★★
麻薬のお話し。考えさせられます。「殺人は容易だ」アガサ・クリスティー ★★★☆
RPGのように動き回って話を聞くうちに、次第に事件の姿が浮かび上がってくるという、クリスティお得意の手法。終盤はサスペンス要素も加わって楽しめます。しかし、(さして意外でもない)意外な人物を真犯人にするために無理をしたなぁ、と思います。「ニッポン樫鳥の謎」エラリー・クイーン ★★☆
「新潟怪談」石動充徳外6名 ★
誠に他愛もないお話でした。「ヒッコリー・ロードの殺人」アガサ・クリスティー ★★★☆
クリスティーには珍しく、ロンドンの下宿が舞台です。下宿人の若者が大勢登場するのですが、これが覚えられず、難儀しました。6月
「弥勒の掌」我孫子武丸 ★★★★☆
あら探しもできますが、いや、なかなかの佳作です。
少ない登場人物で、シンプルに話は展開します。中心人物の描写もよいです。若干叙述トリック要素あります。「誰の死体?」ドロシー・L・セイヤーズ ★★★
トリックのためのトリック。雰囲気を楽しめるかどうかです。「隠し剣秋風抄」藤沢周平 ★★★★★
『隠し剣孤影抄』の姉妹編です。「ゴルフ場の殺人」アガサ・クリスティー ★★★★
ポアロ長編第2作。非常に凝ったお話しです。
創元推理文庫で読んだのですが、巻末の『クリスチィ訪問記』もよかったです。