本R6/1-6

==星の数は自分に合ったかどうかにより、作品の一般的評価からは外れています==

2023年
1月

「亜愛一郎の狼狽」泡坂妻夫             ★★★☆
バラエティに富んだ短編作品集。呻るようなトリックがあるわけではないですが、癒やされるというか、読んで楽しいミステリーです。

「マギンティ夫人は死んだ」アガサ・クリスティー   ★★★★
ゆったりした序盤から加速していきます。

「三つの棺」ジョン・ディクスン・カー        ★★★☆
書内の『密室講義』で、トリックに対する”ありえない”との批判を批判しているのですが、現実的かどうかはともかく、物語を成立させる説得力があるかはやはり大事だと思います(単にトリックの善し悪しだけでなく、筆の力にもよります)。で本書ですが、いくつか欠点はあると思います。しかし確かによい所もあるのです。

「受験生は謎解きに向かない」ホリー・ジャクソン   ★★★★
『自由研究には向かない殺人』の前日譚。160頁と短めですが、工夫が凝らされてます。主人公の魅力は『自由研究-』には及ばないですが、らしさは感じられます。

「でぃすぺる」今村昌弘               ★★★☆

2月

「無実はさいなむ」アガサ・クリスティー       ★★★★★
ポアロもマープルも出ない、いわゆるノンシリーズもの。円熟味があります。

「白亜紀往事」劉慈欣                ★★★★
『老神介護』に収められた短編のロングバージョン。壮大なおとぎ話です。
『鋼鉄紅女』に失望して以来、読んだSFは劉慈欣だけですね。読みたいSFに出会わないです。

「湖底のまつり」泡坂妻夫             ★★★★☆
作者の他の作品とは一線を画す異色作。話は予想外の方向へ進みますが、最後にはちゃんと収束します。

「人形館の殺人」綾辻行人  ★★☆

「死の猟犬」アガサ・クリスティー         ★★★★
毛色の変わった短編集。面白かったです(解説は除く)。

3月

「悪の教典」(上)(下)貴志祐介          ★★★★★
すがすがしいまでの主人公の悪人ぶりです。しかし舞台となる学校の先生もかなりひどいです。最後の一文には驚かされました。

「世界推理短編傑作集5」江戸川乱歩・編      ★★★★★
全5巻の最終巻です。粒ぞろいの作品群。

「午前零時のサンドリヨン」相沢沙呼        ★★★★
ニュートリノですか。ところで須川君のファーストネームは何だったのだろう。

「チムニーズ館の秘密」アガサ・クリスティー    ★★☆
登場人物が多い上に、変わった名前で頭に入りませんでした(年のせいかも知れないですが)。人物の個性や魅力も今一。「七つの時計」の姉妹編だとか。しかし「七つの時計」すっかり忘れています。また読んでみようかな。

「七つの時計」アガサ・クリスティー        【評価済み】

「マリアビートル」伊坂幸太郎           ★★★★★
伊坂氏の作品はかなり前に『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んで以来です。『アヒル-』の巧みさには舌を巻いたのですが、自分には合わないように感じて、遠ざかっていました。本書も前半は”ちとどうかな”と思ったのですが、次第に面白くなり、加速するように読み終えました。

4月

「チャイナ橙の謎」エラリー・クイーン       ★★☆
うーん、いろいろと今一です。

「エアーズ家の没落」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★☆
原題は”The Little Stranger”。この本は(原題も含め)、一貫した解釈を拒否しています。個々の出来事の解釈はあり得るにしろ、全体を通してあるものはただの雰囲気だけと思います。巻末の解説もとまどい気味のような。が、サラ・ウォーターズの世界は楽しめます。

「象は忘れない」アガサ・クリスティー       ★★★☆
最後に執筆されたポアロものだそうです。プロットは今ひとつのように感じましたが、円熟の描写がそれを補ってます。

「グラスホッパー」伊坂幸太郎           ★★★★
『マリアビートル』の姉妹編。こちらの方が書かれたのも物語の順序も先になります。お話しとしては、それぞれ独立しています。

「茶色の服の男」アガサ・クリスティー       ★★★★
あまり期待していなかったノンシリーズもの。なかなか面白いじゃないですか。かの有名作品に通じるものがあるなと思ったら、解説でもそのように言われていて、そういう位置づけになるようです。ジュニア版もあるそうですが、このまま中学生でも楽しめそうです。

5月

「隠し剣孤影抄」藤沢周平             ★★★★★
映画になった『隠し剣鬼ノ爪』を含む短編8作。ほとんど40~50頁程度の中に、背景・経緯、達人の立ち会い、秘剣そして欲と愛憎がうまく盛り込まれています。『女人剣さざ波』がよかったです。

「コブラ」(上)(下)フレデリック・フォーサイス  ★★★★
麻薬のお話し。考えさせられます。

「殺人は容易だ」アガサ・クリスティー       ★★★☆
RPGのように動き回って話を聞くうちに、次第に事件の姿が浮かび上がってくるという、クリスティお得意の手法。終盤はサスペンス要素も加わって楽しめます。しかし、(さして意外でもない)意外な人物を真犯人にするために無理をしたなぁ、と思います。

「ニッポン樫鳥の謎」エラリー・クイーン      ★★☆

「新潟怪談」石動充徳外6名            ★
誠に他愛もないお話でした。

「ヒッコリー・ロードの殺人」アガサ・クリスティー ★★★☆
クリスティーには珍しく、ロンドンの下宿が舞台です。下宿人の若者が大勢登場するのですが、これが覚えられず、難儀しました。

6月

「弥勒の掌」我孫子武丸              ★★★★☆
あら探しもできますが、いや、なかなかの佳作です。
少ない登場人物で、シンプルに話は展開します。中心人物の描写もよいです。若干叙述トリック要素あります。

「誰の死体?」ドロシー・L・セイヤーズ      ★★★
トリックのためのトリック。雰囲気を楽しめるかどうかです。

「隠し剣秋風抄」藤沢周平             ★★★★★
『隠し剣孤影抄』の姉妹編です。

「ゴルフ場の殺人」アガサ・クリスティー      ★★★★
ポアロ長編第2作。非常に凝ったお話しです。
創元推理文庫で読んだのですが、巻末の『クリスチィ訪問記』もよかったです。

2024年07月30日│記事の投稿者:toyama│ | コメントはまだありません
本R5/7-12

7月

「三体0 球状閃電」劉慈欣         ★★★★★
三体との関連はほとんどないですが、これはこれで面白かったです。

「塞王の楯」今村翔吾            ★★★★★
うまいです。型にはまった登場人物達の型どおりのやり取りが、いちいちかっこいい。合戦も工夫が凝らされています。登場人物に悪人がいないというのも珍しい。多少の突っ込み所は感じましたが、とにかくロマンを感じさせる王道時代小説でした。

「世界推理短編傑作集4」江戸川乱歩・編   ★★★★★
”奇妙な味”の作品が多めですが、どれも楽しめました。『密室の行者』は(実現性ゼロですが)実にユニークなトリックでした。

8月

「不実在探偵の推理」井上悠宇        ★★★
サラッと気楽に読めます。

「そして医師も死す」D・M・ディヴァイン   ★★★☆
うまいと思うのですが、読んで爽快感、共感、哀感等々を感じないです。どこか他人事のような感じ。

「体育館の殺人」青崎有吾          ★★★★
以前から気になっていた作品ですが、おじさん向けでなさそうで遠慮してました。
いろんな意味で思ったとおりでしたが、思った以上に面白かったです。文がシンプルでテンポよく、さくさく読めます。

「第三の女」アガサ・クリスティー      ★★☆
変わった趣向の作品。解決されるべき謎が明示されないまま物語は進みます。一体何が謎なのか、読者はそこから考えなくてはなりません。

9月

「水族館の殺人」青崎有吾          ★★★
読者挑戦型式の作品だと、予想が外れたときについつい辛口評価したくなるので、そこは割り引いて考えなければと思いますが、正直かなり推理、論理、解明に粗があるように思います。そういうものと思って読むのが吉。文章や雰囲気は好きです。

「満潮に乗って」アガサ・クリスティー    ★★★☆
傑作となり得るポテンシャルのある作品と思います。惜しかった。

「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」青崎有吾     ★★★★
ミステリ風味のライトノベル(?)として。

「図書館の殺人」青崎有吾          ★★★☆
今月は青崎有吾月間になってしまいました。
天馬君の過去は今後に持ち越しのようですが、続きは出るのでしょうか。

「親指のうずき」アガサ・クリスティー    ★★★★☆
トミーとタペンスもの。期待以上に面白かったです。

10月

「罪人の選択」貴志祐介          ★★★★☆
中編集『夜の記憶』『呪文』『罪人の選択』『赤い雨』。よかったです。

「杉の柩」アガサ・クリスティー      ★★★★
TVドラマ版を思い出しながら読みました。
原題『SAD CYPRESS』はシェークスピアの作品から取られたものだそうですが、直訳すると『悲しい糸杉(orヒノキ)』とでもなるところ、結構ひねりましたね。

「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン    ★★★★★
主人公のキャラがよいです。巻末の解説では、その魅力を”フェアネス”という言葉で表していますが、成る程と思います。
それにしても、殺人事件を自由研究の題材にするとは、日本ではフィクションにしても思いつかないところです。

「アリバイ崩し承ります」大山誠一郎          ★★★
スマホ、防犯カメラ、Nシステム、DNA鑑定等により、現代では不可能犯罪を実現するトリックの創造は極めて難しいです。クローズドサークル等にはこれらを回避する役割があるわけですが、本書ではこれらは全て触れないことで回避しています。なかなか潔いです。が、アリバイトリックはいささか技巧的過ぎる嫌いがあります。

「ヘラクレスの冒険」アガサ・クリスティー       ★★★★
ポアロもの連作短編集。TVドラマ『ヘラクレスの難業』は本書の中からいくつかのエピソードを取りだして、作り直した長編ドラマになります。

11月

「ジャンピング・ジェニイ」アントニイ・バークリー   ★★★★
序盤は普通のミステリっぽいのですが、次第にミステリの王道から逸れていきます。それが面白いのです。

「11文字の檻」青崎有吾               ★★★★☆
ノンジャンルの中短編(min:3p~max:102p)。裏染天馬シリーズとは違った趣きです。恋澤姉妹がお気に入り。

「魔術館の一夜」泡坂妻夫               ★★★
マジシャンにしてミステリ作家であらせられる泡坂氏の作品。かつて読んだ『しあわせの書』『生者と死者』には驚嘆させられました。本書もミステリと思って読み始めたら、マジックの本でした。マジックの世界の片鱗と作者の造詣の深さは感じられました。

「NかMか」アガサ・クリスティー           ★★★
話の内容は今一つでしたが、トミーとタペンスは好きなのです。

「11枚のとらんぷ」泡坂妻夫             ★★★★
人を楽しませるのが大好きという作者の人柄が感じられる佳品。

12月

「愛国殺人」アガサ・クリスティー           ★★★☆
ちょっと凝り過ぎかもしれません。

「女彫刻家」ミネット・ウォルターズ          ★★
文章はうまいと思います。読み進む内、事件の謎解明に向けて期待が高まります。ですが読み終わって感じたのは、”ん?なんだこれは?”。一応の犯人は呈示されます。が最後は他の真相を仄めかします。途中いくつか思わせぶりの記述もありました。が、それらに合理性を感じるだけの材料は出てきません。本作の重要ポイントと思った陰惨な殺人現場はどうやって、なぜ生じたのか説かれるところがありません。何が彫刻家を彫刻家たらしめているのかも読めるものと思ったのですが…。これらはただの雰囲気作りだったのでしょうか。
もやもやした気分のまま解説(?)を読んで驚きました。これほど作者・作品を貶した解説は見たことがありません。自分の感じたもやもやの元だけでなく、更に厳しい批判が書かれており、全面的にではないですが、正直頷けるところもありました。

「黒牢城」米澤穂信                  ★★★☆
戦国時代を舞台にしたミステリ小説ですが、時代小説として楽しむのが吉。

「死が最後にやってくる」アガサ・クリスティー     ★★★★★
『黒牢城』は約450年前の日本戦国時代が舞台でしたが、こちらはなんと約4000年前の古代エジプトが舞台です。クリスティーにこんな作品があったとは。
当時の習俗が興味深く描かれています。事件の謎はかなり分かり易いのですが、特殊設定の物語にはマッチしています。漫画のキャラクターのような登場人物達も生き生きとして、古代エジプトに想いを馳せさせられます。小中学生でも楽しめそう。

「優等生は探偵に向かない」ホリー・ジャクソン    ★★★★☆
『自由研究には向かない殺人』の続編。よかったですが、自分は第1作で描かれた主人公の方が好きです。その辺も第3部次第かもしれません。物語は傷心の主人公とともに第3部へ。

「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン    ★★★★☆
(読了は2024/1/1だが、こちらに書く)
それぞれ異なる味わいの3部作でした。本作では主人公の内面の闇がくどいほど書かれ、もちろん作者はやや不合理とも見える全体のプロットを支えるため意図してやっていることなのでしょうが、冗長さは感じました。それでも作者の挑戦心は評価したいです。物語の後半は『ジャンピング・ジェニイ』を思い出してしまいました。

2024年01月16日│記事の投稿者:toyama│ | コメントはまだありません
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