- 本R5/7-12
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7月
「三体0 球状閃電」劉慈欣 ★★★★★
三体との関連はほとんどないですが、これはこれで面白かったです。「塞王の楯」今村翔吾 ★★★★★
うまいです。型にはまった登場人物達の型どおりのやり取りが、いちいちかっこいい。合戦も工夫が凝らされています。登場人物に悪人がいないというのも珍しい。多少の突っ込み所は感じましたが、とにかくロマンを感じさせる王道時代小説でした。「世界推理短編傑作集4」江戸川乱歩・編 ★★★★★
”奇妙な味”の作品が多めですが、どれも楽しめました。『密室の行者』は(実現性ゼロですが)実にユニークなトリックでした。8月
「不実在探偵の推理」井上悠宇 ★★★
サラッと気楽に読めます。「そして医師も死す」D・M・ディヴァイン ★★★☆
うまいと思うのですが、読んで爽快感、共感、哀感等々を感じないです。どこか他人事のような感じ。「体育館の殺人」青崎有吾 ★★★★
以前から気になっていた作品ですが、おじさん向けでなさそうで遠慮してました。
いろんな意味で思ったとおりでしたが、思った以上に面白かったです。文がシンプルでテンポよく、さくさく読めます。「第三の女」アガサ・クリスティー ★★☆
変わった趣向の作品。解決されるべき謎が明示されないまま物語は進みます。一体何が謎なのか、読者はそこから考えなくてはなりません。9月
「水族館の殺人」青崎有吾 ★★★
読者挑戦型式の作品だと、予想が外れたときについつい辛口評価したくなるので、そこは割り引いて考えなければと思いますが、正直かなり推理、論理、解明に粗があるように思います。そういうものと思って読むのが吉。文章や雰囲気は好きです。「満潮に乗って」アガサ・クリスティー ★★★☆
傑作となり得るポテンシャルのある作品と思います。惜しかった。「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」青崎有吾 ★★★★
ミステリ風味のライトノベル(?)として。「図書館の殺人」青崎有吾 ★★★☆
今月は青崎有吾月間になってしまいました。
天馬君の過去は今後に持ち越しのようですが、続きは出るのでしょうか。「親指のうずき」アガサ・クリスティー ★★★★☆
トミーとタペンスもの。期待以上に面白かったです。10月
「罪人の選択」貴志祐介 ★★★★☆
中編集『夜の記憶』『呪文』『罪人の選択』『赤い雨』。よかったです。「杉の柩」アガサ・クリスティー ★★★★
TVドラマ版を思い出しながら読みました。
原題『SAD CYPRESS』はシェークスピアの作品から取られたものだそうですが、直訳すると『悲しい糸杉(orヒノキ)』とでもなるところ、結構ひねりましたね。「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン ★★★★★
主人公のキャラがよいです。巻末の解説では、その魅力を”フェアネス”という言葉で表していますが、成る程と思います。
それにしても、殺人事件を自由研究の題材にするとは、日本ではフィクションにしても思いつかないところです。「アリバイ崩し承ります」大山誠一郎 ★★★
スマホ、防犯カメラ、Nシステム、DNA鑑定等により、現代では不可能犯罪を実現するトリックの創造は極めて難しいです。クローズドサークル等にはこれらを回避する役割があるわけですが、本書ではこれらは全て触れないことで回避しています。なかなか潔いです。が、アリバイトリックはいささか技巧的過ぎる嫌いがあります。「ヘラクレスの冒険」アガサ・クリスティー ★★★★
ポアロもの連作短編集。TVドラマ『ヘラクレスの難業』は本書の中からいくつかのエピソードを取りだして、作り直した長編ドラマになります。11月
「ジャンピング・ジェニイ」アントニイ・バークリー ★★★★
序盤は普通のミステリっぽいのですが、次第にミステリの王道から逸れていきます。それが面白いのです。「11文字の檻」青崎有吾 ★★★★☆
ノンジャンルの中短編(min:3p~max:102p)。裏染天馬シリーズとは違った趣きです。恋澤姉妹がお気に入り。「魔術館の一夜」泡坂妻夫 ★★★
マジシャンにしてミステリ作家であらせられる泡坂氏の作品。かつて読んだ『しあわせの書』『生者と死者』には驚嘆させられました。本書もミステリと思って読み始めたら、マジックの本でした。マジックの世界の片鱗と作者の造詣の深さは感じられました。「NかMか」アガサ・クリスティー ★★★
話の内容は今一つでしたが、トミーとタペンスは好きなのです。「11枚のとらんぷ」泡坂妻夫 ★★★★
人を楽しませるのが大好きという作者の人柄が感じられる佳品。12月
「愛国殺人」アガサ・クリスティー ★★★☆
ちょっと凝り過ぎかもしれません。「女彫刻家」ミネット・ウォルターズ ★★
文章はうまいと思います。読み進む内、事件の謎解明に向けて期待が高まります。ですが読み終わって感じたのは、”ん?なんだこれは?”。一応の犯人は呈示されます。が最後は他の真相を仄めかします。途中いくつか思わせぶりの記述もありました。が、それらに合理性を感じるだけの材料は出てきません。本作の重要ポイントと思った陰惨な殺人現場はどうやって、なぜ生じたのか説かれるところがありません。何が彫刻家を彫刻家たらしめているのかも読めるものと思ったのですが…。これらはただの雰囲気作りだったのでしょうか。
もやもやした気分のまま解説(?)を読んで驚きました。これほど作者・作品を貶した解説は見たことがありません。自分の感じたもやもやの元だけでなく、更に厳しい批判が書かれており、全面的にではないですが、正直頷けるところもありました。「黒牢城」米澤穂信 ★★★☆
戦国時代を舞台にしたミステリ小説ですが、時代小説として楽しむのが吉。「死が最後にやってくる」アガサ・クリスティー ★★★★★
『黒牢城』は約450年前の日本戦国時代が舞台でしたが、こちらはなんと約4000年前の古代エジプトが舞台です。クリスティーにこんな作品があったとは。
当時の習俗が興味深く描かれています。事件の謎はかなり分かり易いのですが、特殊設定の物語にはマッチしています。漫画のキャラクターのような登場人物達も生き生きとして、古代エジプトに想いを馳せさせられます。小中学生でも楽しめそう。「優等生は探偵に向かない」ホリー・ジャクソン ★★★★☆
『自由研究には向かない殺人』の続編。よかったですが、自分は第1作で描かれた主人公の方が好きです。その辺も第3部次第かもしれません。物語は傷心の主人公とともに第3部へ。「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン ★★★★☆
(読了は2024/1/1だが、こちらに書く)
それぞれ異なる味わいの3部作でした。本作では主人公の内面の闇がくどいほど書かれ、もちろん作者はやや不合理とも見える全体のプロットを支えるため意図してやっていることなのでしょうが、冗長さは感じました。それでも作者の挑戦心は評価したいです。物語の後半は『ジャンピング・ジェニイ』を思い出してしまいました。