- 2024年07月30日本R6/1-6
-
==星の数は自分に合ったかどうかにより、作品の一般的評価からは外れています==
2023年
1月「亜愛一郎の狼狽」泡坂妻夫 ★★★☆
バラエティに富んだ短編作品集。呻るようなトリックがあるわけではないですが、癒やされるというか、読んで楽しいミステリーです。「マギンティ夫人は死んだ」アガサ・クリスティー ★★★★
ゆったりした序盤から加速していきます。「三つの棺」ジョン・ディクスン・カー ★★★☆
書内の『密室講義』で、トリックに対する”ありえない”との批判を批判しているのですが、現実的かどうかはともかく、物語を成立させる説得力があるかはやはり大事だと思います(単にトリックの善し悪しだけでなく、筆の力にもよります)。で本書ですが、いくつか欠点はあると思います。しかし確かによい所もあるのです。「受験生は謎解きに向かない」ホリー・ジャクソン ★★★★
『自由研究には向かない殺人』の前日譚。160頁と短めですが、工夫が凝らされてます。主人公の魅力は『自由研究-』には及ばないですが、らしさは感じられます。「でぃすぺる」今村昌弘 ★★★☆
2月
「無実はさいなむ」アガサ・クリスティー ★★★★★
ポアロもマープルも出ない、いわゆるノンシリーズもの。円熟味があります。「白亜紀往事」劉慈欣 ★★★★
『老神介護』に収められた短編のロングバージョン。壮大なおとぎ話です。
『鋼鉄紅女』に失望して以来、読んだSFは劉慈欣だけですね。読みたいSFに出会わないです。「湖底のまつり」泡坂妻夫 ★★★★☆
作者の他の作品とは一線を画す異色作。話は予想外の方向へ進みますが、最後にはちゃんと収束します。「人形館の殺人」綾辻行人 ★★☆
「死の猟犬」アガサ・クリスティー ★★★★
毛色の変わった短編集。面白かったです(解説は除く)。3月
「悪の教典」(上)(下)貴志祐介 ★★★★★
すがすがしいまでの主人公の悪人ぶりです。しかし舞台となる学校の先生もかなりひどいです。最後の一文には驚かされました。「世界推理短編傑作集5」江戸川乱歩・編 ★★★★★
全5巻の最終巻です。粒ぞろいの作品群。「午前零時のサンドリヨン」相沢沙呼 ★★★★
ニュートリノですか。ところで須川君のファーストネームは何だったのだろう。「チムニーズ館の秘密」アガサ・クリスティー ★★☆
登場人物が多い上に、変わった名前で頭に入りませんでした(年のせいかも知れないですが)。人物の個性や魅力も今一。「七つの時計」の姉妹編だとか。しかし「七つの時計」すっかり忘れています。また読んでみようかな。「七つの時計」アガサ・クリスティー 【評価済み】
「マリアビートル」伊坂幸太郎 ★★★★★
伊坂氏の作品はかなり前に『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んで以来です。『アヒル-』の巧みさには舌を巻いたのですが、自分には合わないように感じて、遠ざかっていました。本書も前半は”ちとどうかな”と思ったのですが、次第に面白くなり、加速するように読み終えました。4月
「チャイナ橙の謎」エラリー・クイーン ★★☆
うーん、いろいろと今一です。「エアーズ家の没落」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★☆
原題は”The Little Stranger”。この本は(原題も含め)、一貫した解釈を拒否しています。個々の出来事の解釈はあり得るにしろ、全体を通してあるものはただの雰囲気だけと思います。巻末の解説もとまどい気味のような。が、サラ・ウォーターズの世界は楽しめます。「象は忘れない」アガサ・クリスティー ★★★☆
最後に執筆されたポアロものだそうです。プロットは今ひとつのように感じましたが、円熟の描写がそれを補ってます。「グラスホッパー」伊坂幸太郎 ★★★★
『マリアビートル』の姉妹編。こちらの方が書かれたのも物語の順序も先になります。お話しとしては、それぞれ独立しています。「茶色の服の男」アガサ・クリスティー ★★★★
あまり期待していなかったノンシリーズもの。なかなか面白いじゃないですか。かの有名作品に通じるものがあるなと思ったら、解説でもそのように言われていて、そういう位置づけになるようです。ジュニア版もあるそうですが、このまま中学生でも楽しめそうです。5月
「隠し剣孤影抄」藤沢周平 ★★★★★
映画になった『隠し剣鬼ノ爪』を含む短編8作。ほとんど40~50頁程度の中に、背景・経緯、達人の立ち会い、秘剣そして欲と愛憎がうまく盛り込まれています。『女人剣さざ波』がよかったです。「コブラ」(上)(下)フレデリック・フォーサイス ★★★★
麻薬のお話し。考えさせられます。「殺人は容易だ」アガサ・クリスティー ★★★☆
RPGのように動き回って話を聞くうちに、次第に事件の姿が浮かび上がってくるという、クリスティお得意の手法。終盤はサスペンス要素も加わって楽しめます。しかし、(さして意外でもない)意外な人物を真犯人にするために無理をしたなぁ、と思います。「ニッポン樫鳥の謎」エラリー・クイーン ★★☆
「新潟怪談」石動充徳外6名 ★
誠に他愛もないお話でした。「ヒッコリー・ロードの殺人」アガサ・クリスティー ★★★☆
クリスティーには珍しく、ロンドンの下宿が舞台です。下宿人の若者が大勢登場するのですが、これが覚えられず、難儀しました。6月
「弥勒の掌」我孫子武丸 ★★★★☆
あら探しもできますが、いや、なかなかの佳作です。
少ない登場人物で、シンプルに話は展開します。中心人物の描写もよいです。若干叙述トリック要素あります。「誰の死体?」ドロシー・L・セイヤーズ ★★★
トリックのためのトリック。雰囲気を楽しめるかどうかです。「隠し剣秋風抄」藤沢周平 ★★★★★
『隠し剣孤影抄』の姉妹編です。「ゴルフ場の殺人」アガサ・クリスティー ★★★★
ポアロ長編第2作。非常に凝ったお話しです。
創元推理文庫で読んだのですが、巻末の『クリスチィ訪問記』もよかったです。
- 2024年01月16日本R5/7-12
-
7月
「三体0 球状閃電」劉慈欣 ★★★★★
三体との関連はほとんどないですが、これはこれで面白かったです。「塞王の楯」今村翔吾 ★★★★★
うまいです。型にはまった登場人物達の型どおりのやり取りが、いちいちかっこいい。合戦も工夫が凝らされています。登場人物に悪人がいないというのも珍しい。多少の突っ込み所は感じましたが、とにかくロマンを感じさせる王道時代小説でした。「世界推理短編傑作集4」江戸川乱歩・編 ★★★★★
”奇妙な味”の作品が多めですが、どれも楽しめました。『密室の行者』は(実現性ゼロですが)実にユニークなトリックでした。8月
「不実在探偵の推理」井上悠宇 ★★★
サラッと気楽に読めます。「そして医師も死す」D・M・ディヴァイン ★★★☆
うまいと思うのですが、読んで爽快感、共感、哀感等々を感じないです。どこか他人事のような感じ。「体育館の殺人」青崎有吾 ★★★★
以前から気になっていた作品ですが、おじさん向けでなさそうで遠慮してました。
いろんな意味で思ったとおりでしたが、思った以上に面白かったです。文がシンプルでテンポよく、さくさく読めます。「第三の女」アガサ・クリスティー ★★☆
変わった趣向の作品。解決されるべき謎が明示されないまま物語は進みます。一体何が謎なのか、読者はそこから考えなくてはなりません。9月
「水族館の殺人」青崎有吾 ★★★
読者挑戦型式の作品だと、予想が外れたときについつい辛口評価したくなるので、そこは割り引いて考えなければと思いますが、正直かなり推理、論理、解明に粗があるように思います。そういうものと思って読むのが吉。文章や雰囲気は好きです。「満潮に乗って」アガサ・クリスティー ★★★☆
傑作となり得るポテンシャルのある作品と思います。惜しかった。「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」青崎有吾 ★★★★
ミステリ風味のライトノベル(?)として。「図書館の殺人」青崎有吾 ★★★☆
今月は青崎有吾月間になってしまいました。
天馬君の過去は今後に持ち越しのようですが、続きは出るのでしょうか。「親指のうずき」アガサ・クリスティー ★★★★☆
トミーとタペンスもの。期待以上に面白かったです。10月
「罪人の選択」貴志祐介 ★★★★☆
中編集『夜の記憶』『呪文』『罪人の選択』『赤い雨』。よかったです。「杉の柩」アガサ・クリスティー ★★★★
TVドラマ版を思い出しながら読みました。
原題『SAD CYPRESS』はシェークスピアの作品から取られたものだそうですが、直訳すると『悲しい糸杉(orヒノキ)』とでもなるところ、結構ひねりましたね。「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン ★★★★★
主人公のキャラがよいです。巻末の解説では、その魅力を”フェアネス”という言葉で表していますが、成る程と思います。
それにしても、殺人事件を自由研究の題材にするとは、日本ではフィクションにしても思いつかないところです。「アリバイ崩し承ります」大山誠一郎 ★★★
スマホ、防犯カメラ、Nシステム、DNA鑑定等により、現代では不可能犯罪を実現するトリックの創造は極めて難しいです。クローズドサークル等にはこれらを回避する役割があるわけですが、本書ではこれらは全て触れないことで回避しています。なかなか潔いです。が、アリバイトリックはいささか技巧的過ぎる嫌いがあります。「ヘラクレスの冒険」アガサ・クリスティー ★★★★
ポアロもの連作短編集。TVドラマ『ヘラクレスの難業』は本書の中からいくつかのエピソードを取りだして、作り直した長編ドラマになります。11月
「ジャンピング・ジェニイ」アントニイ・バークリー ★★★★
序盤は普通のミステリっぽいのですが、次第にミステリの王道から逸れていきます。それが面白いのです。「11文字の檻」青崎有吾 ★★★★☆
ノンジャンルの中短編(min:3p~max:102p)。裏染天馬シリーズとは違った趣きです。恋澤姉妹がお気に入り。「魔術館の一夜」泡坂妻夫 ★★★
マジシャンにしてミステリ作家であらせられる泡坂氏の作品。かつて読んだ『しあわせの書』『生者と死者』には驚嘆させられました。本書もミステリと思って読み始めたら、マジックの本でした。マジックの世界の片鱗と作者の造詣の深さは感じられました。「NかMか」アガサ・クリスティー ★★★
話の内容は今一つでしたが、トミーとタペンスは好きなのです。「11枚のとらんぷ」泡坂妻夫 ★★★★
人を楽しませるのが大好きという作者の人柄が感じられる佳品。12月
「愛国殺人」アガサ・クリスティー ★★★☆
ちょっと凝り過ぎかもしれません。「女彫刻家」ミネット・ウォルターズ ★★
文章はうまいと思います。読み進む内、事件の謎解明に向けて期待が高まります。ですが読み終わって感じたのは、”ん?なんだこれは?”。一応の犯人は呈示されます。が最後は他の真相を仄めかします。途中いくつか思わせぶりの記述もありました。が、それらに合理性を感じるだけの材料は出てきません。本作の重要ポイントと思った陰惨な殺人現場はどうやって、なぜ生じたのか説かれるところがありません。何が彫刻家を彫刻家たらしめているのかも読めるものと思ったのですが…。これらはただの雰囲気作りだったのでしょうか。
もやもやした気分のまま解説(?)を読んで驚きました。これほど作者・作品を貶した解説は見たことがありません。自分の感じたもやもやの元だけでなく、更に厳しい批判が書かれており、全面的にではないですが、正直頷けるところもありました。「黒牢城」米澤穂信 ★★★☆
戦国時代を舞台にしたミステリ小説ですが、時代小説として楽しむのが吉。「死が最後にやってくる」アガサ・クリスティー ★★★★★
『黒牢城』は約450年前の日本戦国時代が舞台でしたが、こちらはなんと約4000年前の古代エジプトが舞台です。クリスティーにこんな作品があったとは。
当時の習俗が興味深く描かれています。事件の謎はかなり分かり易いのですが、特殊設定の物語にはマッチしています。漫画のキャラクターのような登場人物達も生き生きとして、古代エジプトに想いを馳せさせられます。小中学生でも楽しめそう。「優等生は探偵に向かない」ホリー・ジャクソン ★★★★☆
『自由研究には向かない殺人』の続編。よかったですが、自分は第1作で描かれた主人公の方が好きです。その辺も第3部次第かもしれません。物語は傷心の主人公とともに第3部へ。「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン ★★★★☆
(読了は2024/1/1だが、こちらに書く)
それぞれ異なる味わいの3部作でした。本作では主人公の内面の闇がくどいほど書かれ、もちろん作者はやや不合理とも見える全体のプロットを支えるため意図してやっていることなのでしょうが、冗長さは感じました。それでも作者の挑戦心は評価したいです。物語の後半は『ジャンピング・ジェニイ』を思い出してしまいました。
- 2023年07月31日本R5/1-6
-
2023年
1月「地球星人」村田 沙耶香 ☆
こういう作品が好きな人もいるのでしょう。それはいいですが、自分にはあいませんでした。主題は分からなくもないですが、世の中にも読者にも挑戦的な作品と思います。作者や作品についてもう少し予備知識があれば。「ねじれた家」アガサ・クリスティー ★★★★☆
ポアロもマープルもいません。というか探偵がいません。犯人は誰か以外の謎もトリックもありません。しかし読ませます。もっと評価されるべき(もしかして評価されていて自分が知らなかっただけ?)佳作。「半身」サラ・ウォーターズ ★★★★★
舞台は1870年代英国。主要登場人物はほとんど女性。主な場面は三つの建物の中。いずれも閉鎖的。中でも刑務所の描写はリアリティが高く、引き込まれます。陰鬱で耽美的。面白いです。ただ帯に書かれているのと違って、自分にとっては「ミステリ-」ではないです(ミステリ-の定義の仕方に帰着するだけですが)。「世界推理短編傑作集3」江戸川乱歩・編 ★★★☆
ヘミングウェイの作品が収められているのは意外でした。
『偶然の審判』の長編版『毒入りチョコレート事件』を読んでみたくなりました。2月
「荊の城」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★★☆
前作『半身』と同じく若い女の子が監禁、軟禁されます。前作に輪をかけて暗く、痛々しく、官能的です。が、楽しめる線としてはギリギリです。表現力は相変わらず高く、目、顔、指、心臓、血液等々様々な描写で人物の感情を伝えます(そこには落とし穴もあるのですが)。筋立てはかなりトリッキーで、正直無理を感じるところもありますが、作者の筆の力でまとめ上げています。「毒入りチョコレート事件」アントニイ・バークリー ★★★★
先月読んだ短編『偶然の審判』の長編版。ミステリマニアなら色々と語りたくなるであろう作品と思います。ですが、(マニアではないので)その辺りは触れません。面白いことは請け合いますが、作者の思惑・思想が強く滲み出ているのを是とするか否とするか。「新世界より」(上)(中)(下)貴志祐介 ★★★★
かなりのボリュームですが、ほとんど一気読みで、エンターテイメントとしては大いに楽しめました。文章は軽快で、雰囲気は青春冒険小説のようです。しかし読後の満足感には欠けました。序盤で想起した『地球の長い午後』風の、こういう条件下では生物、社会はこうなるのではないかという説明、考察が、様々な生物につき随所で、ヒトについては物語全体で行われ、そこにストーリーをからめていくのですが、難しかったのでしょう。もし本作が現代の価値観への挑戦、相対化を一つのテーマとしているのならば、自分にはあまり響かなかったです。本書のターゲットとなるような読者層から自分はとうに外れているのでしょう。辛口になりましたが、面白かったです。3月
「人類の起源」篠田謙一 ★★
「キャリー」スティーヴン・キング ★★★★☆
昔映画は見ましたが、小説は未読だったところ、BOOKOFFで見かけて。
作品とは関係ないですが、最後の解説がやたら長いです。「緑衣の女」アーナルデュル・インドリダソン ★★★☆
同じ作者の『湿地』を読もうかと思っていたところ、BOOKOFFで見かけたので。
なかなかの良作で様々な賞をとったのも宜なるかな。しかし、自分が読みたい話ではなかったです。4月
「忘られぬ死」アガサ・クリスティー ★★★
名探偵の登場しない所謂ノンシリーズものですが、ポアロものの短編『黄色いアイリス』とそっくりな話です。意外性のある犯人、巧みな人物描写で良作とは思いますが、トリックに説得力がありません。「黄昏の彼女たち」(上)(下)サラ・ウォーターズ ★★★☆
サラ・ウォーターズの作品を読むのは『半身』『荊の城』に次いで三作目ですが、前の作品の魅力となっていた独特の陰鬱さがないのは残念でした。あと、やはりというかの共通点があり、『荊の城』で楽しめるギリギリと感じたそれが出すぎて、若干引いてしまいました。心理描写は流石です。5月
【傘鉾『マリオ』作成】
「君のクイズ」小川哲 ★★★★☆
知られざる早押しクイズの世界。求められるのは単なる知識ではない。
面白かったです。「遮断地区」ミネット・ウォルターズ ★★★★☆
いくつかの点でよく分かりませんでしたが、緊迫感はありました。6月
「鋼鉄紅女」シーラン・ジェイ・ジャオ ☆
二人以上の操縦者が巨大ロボットを動かすというのは、一つの系譜になっているのてしょうか。見たようなロボットの造形、三段階に変形進化するロボット。うーん、安易な気もしますが、大事なのは中身ですね、うん。期待して読みましょう。
序盤から中盤までは面白く読めました。特に戦闘シーンの描写はなかなか。
が、女性主人公と二人の男性の三角関係が出てきたあたりから、次第に自分の気持ちは離れていきます。なんとも主人公に都合のよい三角関係です。
また、男性が築いた独善的社会への反抗が繰り返し唱えられるのですが、あまりにも頻繁で表層的なので次第に鼻白んできます。男性に対する概念は、女性ではなく、死んだ姉に象徴される若い女子です(ただし、その時々で使い分けられているような)。若い女子は観念的な存在で、無垢な犠牲者として位置づけられます。物語の設定上強く虐げられた立場にあるのですが、そこに現実の男尊女卑の習慣や倫理を融合させ、男性の悪を強く主張します(なかなか巧妙です)。このロジックは主人公の場当たり的な言動を正当化するために使われるのですが、そんな理屈では受容できないほど、主人公と物語は破綻していきます。そして、とってつけたようなラストで物語は空中分解します。「ブラウン神父の醜聞」G・K・チェスタトン ★★★☆
「死人の鏡」アガサ・クリスティー ★★★☆
中編集。『厩舎街の殺人』『謎の盗難事件』『死人の鏡』『砂に書かれた三角形』の四作。旧訳版のせいもあるのか、表題作の「死人の鏡」は分かりにくかったです。引用されているテニスンの詩”鏡は左右にひび割れた”はマープルものの『鏡は横にひび割れて』にも使われてるものですね。
- 2023年05月22日R5傘鉾 マリオ
-
4年ぶりの御神幸。
今年の傘鉾は、マリオを作りました。
- 2023年01月16日本R4/10-12
-
==星の数は自分に合ったかどうかにより、作品の一般的評価からは外れています==
10月
「レンブラントをとり返せ」ジェフリー・アーチャー ★★★☆
「魔術の殺人」アガサ・クリスティー ★★★
マープルもの。登場人物の関係が複雑でとっつきにくかったです。トリックは素直で、もっと裏があるのではと思いながら読んでいましたが、そのままでした。「詭弁の論理学」野﨑昭弘 ★★★
読み始めたのは8月だったと思います。中断しつつようやく読了。
1976年初版発行以来のロングセラーということですが、若干期待外れでした。「隅の老人の事件簿」バロネス・オルツィ ★★★★
【シャーロック・ホームズのライヴァルたち】と銘打たれたシリーズの1冊。「おしどり探偵」でも触れられてます。
女性新聞記者が事件の説明をして隅の老人が解決するものと思い込んでましたが、実は事件の内容から解決まで隅の老人がほとんど一人で語ります。なので人物描写は浅いです。が、いいのです。隅の老人のキャラだけで。トリックは(多少強引な点があっても)各作品ともちゃんと作られています。ただ似たようなネタが多い気はします。
**1月に本棚の奥から別に同書を発見。既読でした。「幸運の25セント硬貨」スティーヴン・キング ★★★★
もう少しスティーヴン・キングを読んでみよう。11月
「ウォッチメイカー」ジェフリー・ディーバー ★★★★☆
埋もれていた本を発掘。15年前のものでした。内容はおろか存在さえも記憶に残っていなかったのですが、読み始めたら出だしに覚えがあったので読んではいたようです。
改めて読んだ感想は、アメリカっぼいっというかハリウッドっぽいというか。表現力、描写力は高いと思います。**TVドラマ化にあわせて「invert 城塚翡翠倒叙集」「invert 城塚翡翠倒叙集」を流し読み。ドラマはなかなかよいです。「invert・・・倒叙集」の最終話は映像化難しそうですが…。
「思考機械の事件簿Ⅰ」ジャック・フットレル ★★★★
これも【シャーロック・ホームズのライヴァルたち】と銘打たれたシリーズの1冊。多様な事件、アイデアがあって面白かったです。中には無理があるのではとというのもありますが。『十三号独房の問題』が収録されていなかったのが残念。12月
「世界推理短編傑作集1」江戸川乱歩・編 ★★★★☆
『十三号独房の問題』目当てで購入。他に隅の老人の『ダブリン事件』もあって得した気分。しかし一番面白かったのは、今更ながら懐かしの『赤毛組合』だったりします。*コロナ感染療養12/4~12/11
「1922」スティーヴン・キング ★★☆
中編の『1922』と短編の『公正な取引』が収められています。
『1922』は、1920年代の田舎の農家の描写が興味深かったですが、作品としては自分には今一。むしろ『公正な取引』の方が面白かったです。「invert II 覗き窓の死角」相沢沙呼 ★★★☆
翡翠の思想が繰り返し語られ、過去をほのめかす記述が多いのは今後への布石なのでしょうか。「世界推理短編傑作集2」江戸川乱歩・編 ★★★☆
やはりチェスタトンは独特の味があります。
- 2022年10月06日本R4/7-9
-
7月
「第四の核」(上)(下)フレデリック・フォーサイス ★★★★★
読ませます。最後ひねり過ぎの感もありますが。「悪魔の選択」(上)(下)フレデリック・フォーサイス ★★★★☆
ウクライナとロシアについての理解が深まりました。「愛の探偵たち」アガサ・クリスティー ★★★★☆
短編集。マープル物がよかったです。8月
「イヴリン嬢は七回殺される」スチュアート・タートン ★★
西澤保彦「七回死んだ男」と同じくタイムループもの。本書はかなり複雑で凝っています。作中、子供達の宝物探しに触れられていますが、本書自体が作者の仕掛けた宝探し遊びなのでしょう。読者をさんざん振り回してくれます。しかし最後に得られるものはありません。「戦場の犬たち」フレデリック・フォーサイス ★★★★
渋いです。「教会で死んだ男」アガサ・クリスティー ★★★★
短編集。ポアロ物はドラマで見たものがちらほらと。9月
「三体 X 観想之宙」宝樹 ★★★☆
三体ファンが創作したスビンオフ。
ほとんど二者の対話になっているのが特徴的です。
最初はスピンオフとしての制約か窮屈そうに感じられましたが、段々と逆にスピンオフだからと開き直って無責任さが強まっていった印象で、読後感はよかったです。にしても第1部は無駄に長いと思いました。「神の拳」(上)(下)フレデリック・フォーサイス ★★★★☆
神の拳>>ずんどこ節の連想で、読んでいる間何度かずんどこ節が脳内再生されてしまいました。「老神介護」劉慈欣 ★★★★★
「流浪地球」劉慈欣 ★★★★☆
「三体」の作者劉慈欣の短編集。着想の豊かさに舌を巻きます。「スマホ脳」アンデシュ・ハンセン ★★★★☆
利便性の対価として自分達は何を失っているのだろうか。「おしどり探偵」アガサ・クリスティー ★★★★
ストーリーはそれなりですが、主人公のトミーとタペンスが魅力的で、楽しく読めます。何人もの名探偵が物まねの対象として出てくるのですが、知らない人が多かったです。
- 2022年07月15日本R4/4-6
- 2022年04月05日本R4/1-3
-
2022年
1月「死のロングウォーク」スティーヴン・キング ★★★☆
100人の少年がひたすら歩く。速度が落ちると警告を受ける。警告が貯まると射殺される。最後の1人になるまで続けられる。
ストーリーは単純ですが、特異な状況設定と人物描写に惹かれる作品です。
かつて夜間50kmハイクをした経験が思い起こされました。「北条義時と鎌倉幕府がよく分かる本」歴史の謎を探る会(編) ★★★★
大河ドラマに影響されて、鎌倉幕府成立期を勉強するために。
複雑すぎて一読したくらいでは理解できません。とにかく抗争に次ぐ抗争に明け暮れていたことは分かりました。「牧師館の殺人」アガサ・クリスティー ★★☆
マープルの長編。若干期待外れ。「華氏451度」レイ・ブラッドベリ ★★
名作の呼び声高い近未来ディストピア小説ですが、自分には合わなかったです。もっと若い頃に読んでいたらまた違ったかも。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(上)・(下)アンディ・ウィアー ★★★★★
著者は、映画「オデッセイ」の原作「火星の人」(未読です)の作者。現在と過去を交互に語る展開に最初は”またか”という気持ちになったのですが、実に分かりやすく(思い出して語られる過去も読者に優しく順序よく思い出してくれる)、読みやすい。いい話でした。2月
「ポアロのクリスマス」アガサ・クリスティー ★★★★☆
何故かずっと短編集と思い込んでいた長編物。トリックには覚えがありました。TVドラマで見たのでしょう。が、犯人は分かりませんでした。分かるわけがない。そこを楽しむのがクリスティー「火星の人」アンディ・ウィアー ★★★★★
先月読んだ「プロジェクト・ヘイル・メアリー」がよかったので。
今度、映画「オデッセイ」も見てみよう。>見てみましたが、本の方がよかったです。「ブラッド・ミュージック」グレッグ・ベア ★☆
軸となるストーリーがない。主人公がいるような、いないような。数少ない魅力ある登場人物はいつの間にか退場してしまう。ごてごてした複雑な文が目につくと思えば、代名詞や一般名詞が誰を何を指しているのか分からない。
変容した北米の様子や幻想的な記述は悪くなかったですが。「黒い家」貴志祐介 ★★★★★
ホラー小説。普段読まないジャンルですが、傑作でした。文は正確でシンプル。大仰な表現はないですが、行間から怖さが滲んできます。全体の構成もいいです。映画化もされるわけです。生保業界の話も興味深かったです。
作者はミステリーも書いているようなので、今度はそちらを読んでみたいです。番外:映画館で公開されたばかりの「ナイル殺人事件」を観る。やや不満。
3月
「地球の長い午後」ブライアン・W・オールディス ★★☆
「硝子のハンマー」貴志祐介 ★★★★
密室ものです。貴志祐介、やはり上手いです。細部にもこだわって、リアリティが高いです。が、リアリティーを求め過ぎのような気もします。「硝子の塔の殺人」知念実希人 ★★★☆
これも密室もの。評価の分かれそうな作品。帯に島田荘司の名があったこともあり、「水晶のビラミッド」を思い出しました。ミステリの蘊蓄話はあまりディープにならないようにセーブしてるのでしょうが、内輪ネタ感がして若干鼻白んでしまいます。力作ではあります。「硝子の家」鮎川哲也(編) ★★★
本書は、「硝子の家」(島久平)、「離れた家」(山沢晴雄)、「鬼面の犯罪」(天城一)の三作品を収録したものです。「硝子の塔の殺人」を読んでいた時にたまたま発掘し、硝子つながりで読みましたが、以前に読んだ覚えが全くありませんでした。「シャム双子の秘密」エラリー・クイーン ★★★★☆
小学5~6年の頃に読んだことがあります。少年探偵団やホームズを読んだだけの子供にとっては衝撃的な話でした。山火事のこととか全く頭から抜け落ちていましたが、犯人というか作者の仕掛けたトリックは覚えていました。思い出補正で評価高めです。
- 2022年01月11日本R3/11-12
-
11月
「火曜クラブ」アガサ・クリスティー ★★★★
「予告殺人」アガサ・クリスティー ★★★★
「謎のクィン氏」アガサ・クリスティー ★
「火曜クラブ」はハヤカワ文庫のマープルの短編集。創元推理文庫の「ミス・マープルと13の謎」と同じ作品のようです。謎解きよりもマープルの雰囲気が楽しい。
「予告殺人」はテレビドラマで見ましたが、本は初めて。これもマープル。面白かったですが、ちと凝り過ぎかも。
「謎のクィン氏」は、肝心のクィン氏に魅力も深みも乏しく感じました。「招かれざる客(有栖川有栖選 必読!Selection1)」笹沢佐保 ★★★
9月にクリスティーの同名作品を読んだばかりですが、本作とは全く関係ありません。「invert 城塚翡翠倒叙集」相沢沙呼 ★★★★☆
倒叙物でありながら、読者への挑戦があるという中編三作品。古畑任三郎パロディ要素ありますが、ミステリーとしての完成度はこちらがずっと高いです。読者を小馬鹿にしたようなところは相変わらず。「造物主の掟」ジェイムズ・P・ホーガン ★★☆
12月
「造物主の選択」ジェイムズ・P・ホーガン ★★☆
「メルカトル悪人狩り」麻耶雄嵩 ★★★★
講談社の『さあ、どんでん返しだ。』と銘打ったシリーズの一冊です。事件後すぐに探偵が解決してしまうのでどんでん返し感はないです。が、軽快で読みやすい。「楽園のアダム」周木律 ☆
同じく講談社の『さあ、どんでん返しだ。』シリーズ。
触れ込みとは違ってミステリーではないです。まぁジャンルは何でもいいのですが。「リラ荘殺人事件」鮎川哲也 ★★★★☆
自分が生まれる前の作品の復刻版。過日「メルカトル悪人狩り」を読みながら、銘探偵メルカトル鮎の名は鮎川哲也に由来するのではと思ったりしていましたが、調べてみたら当たりでした。話の内容は、とにかく次々と人が死にます。トリックや仕掛けもたっぷりです(その分メインとなるべき謎が埋没している感もありますが)。展開の早さを楽しむのが吉。「鴉」麻耶雄嵩 ★★★☆
「私は長編には向かない探偵なんだよ」と語るメルカトル鮎の長編ものですが、探偵の出番はほとんどないです。
本書の登場人物に乙骨という人がいます。漫画「呪術廻戦」の同名の登場人物はここからとったのでしょうか。「エンダーのゲーム」(上)・(下)オースン・スコット・カード ★★★☆
「死者の代弁者」(上)・(下)オースン・スコット・カード ★★★
シリーズ4冊一気買い。読み始めて間もなく、作者は「消えた少年たち」の著者であることを知りました。そうと分かっていればこれらの本は買わなかったでしょう(自分の中で「消えた少年たち」の評価はかなり低いのです)。
が、これらの作品はなかなかよかったです。「円」劉慈欣 ★★★★
「三体」の作者劉慈欣の短編集。いろいろなタイプの作品があって楽しめました。
- 2021年11月02日本R3/09-10
-
9月
「すごい物理学講義」カルロ・ロヴェッリ ★★★★
読み進むにつれて段々内容が分からなくなる。でも何となく分かるような気にさせてくれる。ひも理論とは別の理論を唱えているらしい。空間を見る目が変わる!?「兇人邸の殺人」今村昌弘 ★★★★
快作「屍人荘の殺人」以来読んでいる同氏の3作目。2作目よりよかった。「招かれざる客」アガサ・クリスティー ★★★★
クリスティーの戯曲。全く知らない作品でしたが流石でした。「怪奇小説集 蜘蛛」遠藤周作 ★★★
「怪奇小説集 共犯者」遠藤周作 ★★★
解説でも述べられているが、一部の作品を除いてあまり「怪奇」ではない。
それでも面白い作品は多いが、いくつかは肩すかし。10月
「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午 ★★★☆
同氏の「密室殺人ゲーム王手飛車取り」は今一合わなかったのですが、こちらは楽しめました。「すべてがFになる」森博嗣 ★★★☆
周囲の描写が分かりやすく、作者は頭のいい人だなと思ったら大学助教授なんですね。
作品は孤島の密室殺人という本格設定。密室への入り方の謎もなかなかのもの。
が、自分側の問題かもしれないですが、作品と読者(自分)との間に距離を感じてしまう。入っていけないというか、入ってこないというか。「未来からのホットライン」ジェイムズ・P・ホーガン ★★
傑作「星を継ぐもの」レベルを無意識にも期待してしまうのだろうか。「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」相沢沙呼 ★★★★★
空き時間に予備知識なしで手にした本。さくさく読めます。中盤までは、あぁこういう感じか、と思っていたのですが、終盤は一気の面白さでした。ちょっと読者を小馬鹿にしたようなところも意外といいです。「そして扉が閉ざされた」岡島二人 ★★★
「ロートレック荘事件」筒井康隆 ★★★★
ネタバレ厳禁につきノーコメント